イベント 思い出の人々 日々雑感

懐かしすぎる笑顔[西江雅之氏]


アジア太平洋こども会議・イン福岡がご縁

1995
※写真はイメージです

「アジア太平洋こども会議・イン福岡」は、福岡青年会議所(福岡JC)の主菜事業として、1989年にスタートしている。
約35か国の国と地域の、11歳の子どもを福岡市に招へいする事業は、毎夏、福岡JCの家族ぐるみの事業として、開催されていた。
※2002年にNPO化され、その事業は継続されている。

アジア太平洋こども会議・イン福岡


「こども国際会議」のメインコーディネーターとして、西江雅之氏来福

当時は、アジア太平洋こども会議・イン福岡の委員会に所属した。
単年度で事業に当たる私たちに与えられたミッションは、「こども国際会議」の開催である。

1995年の夏に招へいする予定のアジア太平洋の国と地域は、39か国約100名の子どもたちだ。
子どもたちが一堂に集まって話し合うということで、いくつかの乗り越えるべき課題があった。
・言語が英語だけでは間に合わないこと。
 調べると16か国の言語でみんなが話すという。
・世界の国の事情を理解しているまとめ役が必要だということ。

そこで、登場されたのが、早稲田大学文学部の教授の西江雅之さんだ。
私は大学の後輩ということで、光栄にも西江先生の担当となった。
スワヒリ語の第一人者ということだけでなく、フランス語やインドネシア語、中国語など軽く7か国語くらいを話されるということだった。
私たちは心強い味方を得た。

当日起こった問題とは!

西江先生の指摘されるポイントは、本当に興味深かった。

いろんな政治信条もあるので、国の紹介をするのに国旗は掲げないということを決めた。
会議のテーマも、「衣食住」にするということとなった。
引率される各国の先生方が、できるだけ英語で子どもの言葉を通訳をしてもらうことを決め、それでも伝わらない言葉の場合は、西江先生が話を要約してくださることになった。

地道にいろんな段取りをしていたにもかかわらず、当日大きな問題が起こった。
台湾の先生と子どもたちが、会議には参加しないというではないか!
聞いてみれば、国旗は掲げないと申し伝えをしていたにもかかわらず、現場レベルではどうしても歓迎の気持ちを伝えたいと、国旗を作り、先生と子どもたちをお迎えをしていたのだった。

掲げられた中国の国旗を見て、台湾の先生は、この会議には参加が難しいと申し入れをされた。
子どもたちも泣き顔である。
西江先生は、静かに「難しい問題だよね」と、様子を見守ってくださった。
丁寧な説明と、国旗のお迎えをやめることで、39か国全員の子ども国際会議がスタートした。

39か国16言語、100人の子どもたちの会議が始まる。

2度ほど福岡に足を運んでくださった西江先生。
驚くほどユニークな体験談の内容とは別に、細やかな情と、生きた観察眼を持つ素晴らしい先生だった。

先生の流暢なテーマの投げかけに、言葉がバラバラの子どもたちの会議が和やかに開催された。

こども

おいしいときはどうやって表現するの?

僕たちの国は、ズズッて大きな音を立てるのが、おいしい意味なんだ

どんな風に食べるの?聞かせて

恥ずかしそうに、お椀を持つパフォーマンスを披露する。最後に大きな音を立ててお椀をすすり込む。

ズズッ!!! ね、エヘヘ!

聞いている子どもたちも、キャッキャッと声をあげて笑う。

みんなは何を使って学校に行くの?

僕は、自分の船に乗っていくよ。

自分専用の船?

うん、そうだよ。僕の船さ。

会場は少しどよめく。

それからはどうやって行くの?

僕の車が待っていて、車に乗って学校まで行くんだよ。

すると一人の子が、立ち上がって彼に声をかける。

僕は、カヌーに乗っていくんだ。一人でね。
ほら、こうやって櫓(ろ)をこぐんだよ。

櫓をこぐ格好をする男の子を見て、話していた子も声をあげて喜ぶ。会場はほのぼのとした空気に包まれていく。

吉祥寺あたりで、ふっと出会えそう。。。

衣食住に関するいろんな会話が起こり、子どもたちにも先生たちにも刺激的な体験だった。
会議の雰囲気を作ってくれたのは、各国の引率の先生たちの頑張りと、西江先生の多様な言語を使った理解力、包容力だったと思う。
本当に、なかなかできない貴重な体験をすることができたと、今でも感謝している。

また、先生と話したいくつかのことは、今度ご紹介するとして、
本当に、ふっと会いたくなる風雲児、西江雅之先生。
今でも吉祥寺のどこかの居酒屋さんで、大好きなアフリカやアメリカの話で盛り上がっていらっしゃる気がする。

改めて、深い感謝を示し、2015年に旅立たれたという現実に、心からのご冥福を祈るばかりである。
西江先生、本当に貴重なお時間をありがとうございました。

おすすめの本の紹介

▼西江先生の本はたくさん読んでほしいな。型にはまらない。ユニークだけど、すごく現実的。「世界って広い。一つだけの見方をしていちゃいかん!」と思うんですよ。

.「ヒトかサルかと問われても」と同じ内容で、つづる西江流旅の視点。

  • この記事を書いた人
  • 最新記事

miki

○早大で演劇活動のかたわら学生ライターとして活動。帰福後、武田鉄矢の兄の広告代理店に勤務。営業力とノウハウを磨き、ライターとして起業。
○企画からの依頼が多く、編集・取材で手掛けた冊子は1000冊超。付随するイベントも多数。文章化する力、販売促進プランを軸にした企画、コミュニケーションでつながることが強みです。
○文章づくり、書くことは、極める厳しさもありますが、企画やWebの世界は果てしなく広がる感じ。地道に積み重ねてきたサイトのご相談も増えています。

-イベント, 思い出の人々, 日々雑感